事業の失敗事例④
第四回目となった、事業の失敗事例。
自分の失敗理由を言語化すればするほど、次に向けた計画の精度が高まっていくのを感じる。
今回は事業の具体的な中身における失敗事例に触れていく。
ターゲットとする顧客セグメントが広すぎる
サービス/ビジネスを成立させるための最低要件は、
そのサービス/ビジネスを求める顧客が存在していることである。
『ビジネス・クリエーション』より
つまり、顧客はどんな人で、どんな課題をもっているのか。
これを掴むことが、サービス/ビジネスをスタートさせる最初のステップとなる。
ただ、上述の『ビジネス・クリエーション』にもあるが、往々にして、、
対象とする顧客セグメントが絞りきれていない
ために上手くいかないことが多い。
私もそのせいで失敗した。
ある時、訪日外国人向けの一眼レフカメラ貸出サービスをやろうとした。
日本人向けの貸出サービスはあるが、訪日外国人向けの貸出サービスはないと思ったからだ。
訪日外国人の中にも、日本の素晴らしい景色を良いカメラで記録したい人で、尚且つカメラを持ってくるのが億劫な人がいるだろうと思った。
とりあえず、サイトをつくってみたり、原宿に行って外人に声をかけて、一眼レフカメラを貸し出そうとしたりしてみた。
上手くいかなかった。
なぜ、上手くいかなかったのか。
"訪日外国人"という括りが広すぎたのだ。
訪日外国人の中でも、カメラを借りたいと思う人はどんな人なのか?
国籍は?年代は?カップルなのか、家族連れなのか?年収はどのくらいなのか?どんな目的で日本に来ているのか?目的地はどこなのか?
具体的にイメージできていなければダメだ。
Amazon創業者のジェフ・ベゾスも、エブリシングストア(何でもオンラインで売るストア)の理想を掲げながらも、敢えて書籍に絞ってスタートした。
Facebookのマーク・ザッカーバーグも、ハーバード大から始めて、次にアイビーリーグ(アメリカのエリート大学)に広めていった。
将来は、幅広い人にサービスを提供するという理想を掲げるべきだ。
しかし、スタートする時は、戦略的に顧客ターゲットを絞るべきだ。
絞ったターゲットの顧客のペルソナを描き、課題を明確にしなければならない。
初めが肝心だ。
PMFを達成しないままスケールさせようとする
よくスタートアップでは、PMF(Product-Market-Fit)の達成が重要だと言われる。
PMFとはどんな状態か?
「インターネットの覇者」とも呼ばれるNetscapeの創始者、そしてFacebookやeBayのボードメンバーとしても知られるマーク・アンドリーセン氏はこう言っている。
PMFがあるとすぐにわかる。
製品を作ると顧客が買いに来る。
サービスを追加すると利用が拡大する。
営業や顧客サポートのスタッフが雇える。
記者から連絡がくる。
先日のカンブリア宮殿でも、PMFを達成した瞬間に該当するようなエピソードがあった。
東洋ライスの雜賀社長は、昔、精米機の出張修理をしていた。
ある時、精米所に来ていたお客さんが「お宅から買った米に小石が入っていたぞ」と精米所の店主に激怒していた。
雜賀さんは、「小石を取り除くための機械を作らないのか?」と店主に聞いた。
しかし、店主は、「日本人は数千年前から、小石と一緒に米を食べているんだ。小石を取り除く方法があるなら誰かがとっくにやっているはずだよ。小石を取り除くのは無理なんだよ。」と答えた。
雜賀さんは、それならば、と自分で小石を取り除く機械を発明した。
その機械を精米所にもっていくと、最初はそんなことできるわけがないと笑われた。
しかし、実演して実際に小石が取り除けるところを見せると、精米所の店主の目の色が変わった。
「これはいくらで売ってくれるんだ?」と食いつくようにして聞いてきた。
それから、小石を取り除く機械は飛ぶように売れた。
これは、古い話だが、明確にPMFを達成した瞬間と言えるだろう。
このような状態を達成してこそ、やっとスケールできるのだ。
お金を突っ込んだら、より多くのお金を得られる状態だ。
しかし私はこの状態を達成していないまま、スケールさせるようなプランを引いてしまった。
PMFを達成するまでは、プロダクトの開発・修正・検証を愚直に続けなければならない。
次は、同じ失敗はしないようにしよう。